
前回の記事では、
黒字であっても資金繰りが苦しくなる瞬間は確実に訪れる
という話をしました。
その原因の多くは、利益ではなく
「現金がいつ入って、いつ出ていくのか」を把握できていないことにあります。
では、どうすればそれを把握できるのでしょうか。
実務の現場でまず最初に行うのが、資金繰り表の作成です。
資金繰り表と聞くと、
「難しそう」「会計の知識が必要そう」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、実務上はシンプルなもので十分です。
この記事では、
財務の現場で実際に使われている考え方をベースに、
初めての方でも作れる資金繰り表の作り方を解説します。
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監修・執筆者:加藤ユウ(資金繰りナビ運営者)
・25年以上にわたり企業の資金繰り支援に従事
・融資交渉・キャッシュフロー改善を現場で推進
・ファイナンシャルプランナー(AFP)
資金繰り管理、融資交渉、業務効率化プロジェクトなどを歴任。
ファイナンシャルプランナー資格を保有し、法人・個人双方の資金戦略に精通。
現場で培った実務知識をもとに、正確で中立的な「資金繰り・ファクタリング」の情報をわかりやすく発信しています。
資金繰り表とは何か
資金繰り表とは、
一定期間における 現金の出入りを時系列で整理した表 です。
損益計算書が「結果」を示すのに対し、
資金繰り表は「これから起きる現金の動き」を可視化します。
つまり、
- 来月の支払いは足りるのか
- どの月が一番資金的に厳しいのか
- いつ、対策を考えるべきか
こうした判断をするための、経営のための実務資料です
資金繰り表は「完璧」を目指さない
最初に強調しておきたいのは、
資金繰り表は完璧である必要はない という点です。
実務の現場でも、最初から精緻な資金繰り表を作ることはほとんどありません。
重要なのは、
「現金の流れを大まかにつかむこと」です。
多少ズレがあっても構いません。
まずは、
「いつ・どれくらい入って、いつ・どれくらい出ていくのか」
を把握することが目的です。
資金繰り表を作る前に準備するもの
資金繰り表を作る前に、次の情報を手元に用意します。
- 現在の預金残高
- 売掛金の入金予定
- 毎月発生する固定的な支払い
- 近々予定されている大きな支出
特別な資料は不要で、
請求書や通帳、支払い予定が分かるメモ程度で十分です。
資金繰り表の基本構成
資金繰り表は、非常にシンプルな構成で問題ありません。
1か月単位で作る場合、基本は次の流れになります。
- 月初の現金残高
- その月の入金予定
- その月の支払い予定
- 月末の現金残高
この「月末残高」が、翌月の「月初残高」になります。
Excelやスプレッドシートで、
横に月、縦に項目を並べるだけで十分です。
入金は「売上」ではなく「入金日」で考える
ここが、多くの方がつまずくポイントです。
資金繰り表では、
「売上が立った月」ではなく、
「実際にお金が入ってくる月」 に入金を計上します。
たとえば、
- 4月に売上計上
- 入金は6月
であれば、資金繰り表の入金は6月です。
この考え方に切り替えるだけで、
資金繰りの見え方は大きく変わります。
支払いは「確実に出ていくもの」から書く
支払いについては、
まずは必ず発生するものから書き出します。
人件費、家賃、外注費、材料費、借入の返済など、
金額がある程度決まっているものを先に記載します。
細かい経費まで最初から入れる必要はありません。
大きな支出を把握するだけでも、十分に効果があります。
資金繰り表を作ると、何が見えるようになるのか
資金繰り表を作ると、
「今月は大丈夫だが、来月が厳しい」
「この月に一時的に資金が足りなくなる」
といったポイントが、事前に見えてきます。
実務の現場では、
この“見える化”ができただけで、
対応のスピードと選択肢が大きく変わります。
資金繰りが厳しくなりそうなときの考え方
資金繰り表を作って
「このままだと厳しそうだ」と分かった場合でも、
すぐに結論を出す必要はありません。
まずは、
- 支払い時期を調整できないか
- 入金を早められないか
- 一時的な対応で乗り切れないか
といった視点で整理します。
そのうえで、
必要に応じて金融機関への相談や、
実務家としてのひとこと
多くの会社で、
資金繰りが苦しくなってから対策を考えています。
しかし、実務の感覚では、
資金繰り表を作った時点で、すでに半分は解決している
と感じることも少なくありません。
見えなかったものが見えるようになるだけで、
判断は驚くほど変わります。
まとめ
資金繰り表は、
特別な会社だけが使うものではありません。
黒字かどうかに関係なく、
「現金がいつ動くのか」を把握するための、
最も基本的で、最も効果的なツールです。
まずはシンプルな形で構いません。
一度作ってみることで、
これまでとは違った視点で経営を見ることができるはずです。
次に読むなら
- 黒字でも資金繰りが苦しくなる瞬間は訪れる
- 資金繰りが厳しくなったときに検討できる選択肢まとめ



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